教授 阿尻 雅文
東北大学多元物質科学研究所
東北大学原子分子材料科学高等研究機構(AIMR)
超臨界状態を使うと、通常水に溶けないはずのものが水に溶けてしまいます。
たとえば、通常は焼却処分される農業廃棄物の稲わら。この技術では、バイオ反応処理の700倍もの速度で反応させることができます。プラスチックス原料、エタノールなどが自在に合成できるようになりますので、焼却処分も必要なし、しかもほかの原料にリサイクルできる究極のエコが実現できるのです。 さらに超臨界状態を作りだすときの熱をリサイクルする応用技術を装置にとりいれることにも成功しています。
この反応場では、有機分子と水溶液が完全に混ざり合いますから、今まで不可能だった有機無機ハイブリッドナノ粒子を作りだすことができます。これができたことで、プラスチックスとの融合も可能となりました。今まで、金属、セラミックス、ガラス、プラスチックスと、様々な新材料が開発されてきましたが、新しい機能が求められ、そのために新たな材料が次々に開発されてきました。我々の技術では、それぞれの材料機能を併せ持つ材料を開発できるのです。社会、産業ニーズに応えるための新たな材料の合成にすでに成功しています。
20年以上前にこの研究を始めたのですが、その当時、超臨界の研究というのはありましたが、炭酸ガスを使った抽出技術が中心でした。反応の研究というのはほとんどなかったのです。私がそれまで行ってきた研究というのは、「反応の研究」で、まったく異なる分野だったのです。そこで、超臨界と反応の研究分野の融合をはかったわけです。
もうひとつは、「水」の魅力です。地球は水の惑星です。水は、地球上にある唯一といってよい溶媒です。超臨界の研究を行っていくうちに、この機能をうまく引き出していけることで、今までにない方法を作り上げることができると気がついたのです。
すでに、この日本発の技術は世界で使われています。
さらに国家プロジェクトにも採用され、企業との連携により、10トンもの生産能力のある装置の開発を行いました。
地球環境に適合し、新しいリサイクル社会を構築し、しかもナノテクや医療にも役に立つ新たな技術がここから出来上がっていくのです。社会、産業が大きく変革する研究をさらに追及すべく、挑戦を続けていきます。
技術を支えるサイエンスを創成する大学と、それを形にする企業との協力で世界をリードする材料開発技術を目指しています。
この研究の応用分野は、エネルギー、廃棄物処理、新材料開発、医療応用ととどまることがないでしょう。
いろいろな分野の知識の融合が本コンソーシアムには不可欠です。ぜひたくさんの企業、研究者にご参加いただきたいと思っています。